「床を担いで」マタイ9:1-8
「子よ、元気を出しなさい。あなたの罪は赦される。」2節
新約聖書の福音書を読みますと、主イエスの活動においては、病や障害を奇跡的に癒す救済者という印象が強く表れています。しかし、この癒しの奇跡という事象を通して、わたしたちに示されている真のメッセージがあります。それは、十字架の死と復活を通して、わたしたちが罪赦され、神の愛に与り、永遠のいのちの希望に生かされていくという、救い主イエスがこの世に来られた本来の意味と目的です。
これは、まるで紙幣の透かしのような構造になっています。福音書の著者が伝えている奇跡を伴う事象は、一つ一つの出来事を透かして見ると、そこには、実は十字架と復活が二重写しのように語られているのです。今日の箇所で言えば、罪の赦しと復活について権威のある方が、この出来事を通して、わたしたちを本当の意味で力付け、新しい人生の歩みへと再び立ち上がらせることになるのです。
このことを象徴的に語っているのは、ここで奇跡に与った者が、自分が病人として担がれてきた「床」を担いで、新しい歩みへと立ち上がっていったことです。「床」とは、わたしたちを今まで支配し、奴隷状態にしてきた人生であり、そこで支配者であったものの正体、つまり罪のことです。そして、主イエスの権威ある罪の赦しと永遠のいのちによって、解き放たれ、勝利して、その罪の現実に向き合っていくようになるのです。罪を認識し、罪と向き合い、そして赦されていく。それが、「床を担いで」いくという奇跡です。